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手術のお話①~外科医は唯一人間を刃物で傷つけても許される職業

[2021.06.14]

皆様、こんにちは。

みうら泌尿器科クリニック院長の三浦徹也です。

この度は当院ホームページをご覧いただきありがとうございます。

このコラムでは、皆様に有益となるような病気の情報を中心に、あまり知られていない医療の裏側など、皆様の興味が湧くような内容を書いていこうと思います。

早いもので開院して約2週間が経過しました。開院直後にも関わらず、ホームぺージや看板を見てご来院いただいた患者さんや、他院からご紹介いただいた患者さん、従来からのかかりつけの患者さん、前勤務先である淡路島からご来院いただいた患者さんなど、多くの患者さんにご来院いただきました。私含めスタッフもまだシステムに完全に慣れていないこともあり、来院していただいた患者さんにご迷惑をおかけしたことも多々あるかと思いますが、これからも皆様に信頼されるかかりつけ医になれるよう真摯に診療に向き合っていきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

また、神戸の病院で勤務していた時に手術や治療をした患者さんが、5年ぶりくらいにわざわざ挨拶をしに来てくださったこともあり、懐かしいとともにわざわざご来院いただいたことに感謝の気持ちで一杯です。このような患者さんに激励をいただき、まだ開院直後ですが、これからも勤務医時代と同じように、神戸の皆様の健康に少しでも寄与できるよう日々努力していかなければいけないと、身の引き締まる思いになりました。

 

さて、今回のコラムでは、皆様が知りたくてもあまり知れない手術のお話をさせてただきます。我々外科医がどのようにして手術に向き合っているかを中心にお話しさせていただきます。

「外科医は唯一人間を刃物で傷つけても許される職業」これは私が常日頃、頭の中に置いていた言葉です。この言葉は、外科医としての誇りや強い責任感をいつも思い出させてくれました。

手術には手の器用さはそこまで必要ではないと思っています。必要なのは、「鍛錬」「頭脳」「勇気」です。

「鍛錬」はどんな職業にも必要だと思いますが、外科医には特に必要なことと思っています。具体的には、糸結びや基本操作の日々の練習、手術の前の予習、手術後の復習です。これはいくらベテランになっても欠かしてはいけない日課です。私の場合は、大きな手術の前の日は、手術の動画を見て手術のイマジネーションをするためにインターネットカフェに必ず行ってました。インターネットカフェは個室空間で周りの騒音もなく、私にとってめちゃくちゃ集中できる環境でした。自宅や医局ではどうしても周りのことが気になり集中できなかったので、インターネットカフェには大変お世話になりました。お陰で某インターネットカフェチェーン店では常にプラチナ会員を維持しており、ポイントは山積みでした、、笑 まさか、手術の動画を見ているとは店の人は分かっていないでしょうが、、

「頭脳」は、臓器の位置や血管の位置などの解剖学的な知識の習得はもちろんですが、それ以外に「常に先のことを考えられる能力」と「予期せぬ事態が起こったときの対応能力」が求められます。「常に先のことを考えられる能力」とは、日常生活では「車の運転」に近いと思います。カーナビ時代ですので、あまり最近は考えて運転することは少なくなりましたが、カーナビがない時代は、地図や渋滞状況を見ながら、目的地にいかに安全に効率よくたどり着けるかを考えて運転していたと思います。手術でもこの考えは大事で、どうやれば一番安全に効率よく腫瘍を取れるかを念頭におき、時には急がば回れの精神も必要で、その場しのぎを絶対にやらないように心がけることが重要です。渋滞していたからUターンして戻る、てことをやるのが最悪で、渋滞を予測し事前にその道を通らないようにすることが大事なんです。次に、「予期せぬ事態が起こったときの対応能力」とは簡単に言えば「記憶力」です。多くの場合は出血したときの対応です。予期せぬ出血が起こったときに、以前同じような場面で自分や上司がどのように対応しその結果どうなったのかが、場面の映像とともに走馬灯のように頭に浮かび、以前の対応と同じ対応が瞬時にできるようになるくらい以前の経験を完璧に覚えている「記憶力」が必要です。これは大学受験で培われてきたと私は思っています。特に受験数学での問題を解くときに、あ、これはあのパターンの問題だ、と頭の中にある引き出しから一つのパターンを出してきて問題を解いていましたが、その感覚に近いです。日本の受験制度には賛否両論ありますが、少なくとも私は手術に対しては役に立っていると思っています。

最後に「勇気」のお話しをします。がんの手術は芸術ではありません。早く綺麗に終わらせることが目的ではなく、最大の目的はがんを治すことです。若いころは誰かが守ってくれるだろうという安心感から、怖いものなしでガンガン攻めた手術をしますが、経験を積めば積むほど怖い経験をします。そのため、安全性を追求しすぎ、がんの根治性を第一に考えなくなり守りに入りたくなってしまうことがあります。一番の肝の場面では危険がつきものですが、その危険を乗り越えがんを完全に摘除するには、「勇気」が必要になります。「若さ」をいつまで保てるかが重要です。若い医師の手術を指導する立場になって思ったことがあります。「手術はベテランが助手をしながら指導し、若い医師が執刀するほうが良い手術ができる」てことです。実は若いころ、恩師である先生に同じことを言われました。「最近はお前らが手術をして俺が助手しているほうが安心なんや」と。年をとると同じことを思うようになるんだなあと思いました。優秀な若い医師は確かな技術と勇気があります。どんどん攻めた手術をするのでそれを指導しながら、何かあったら俺がなんとかしてやるという安心感を与えてやると良い手術ができるのです。しかし、それが逆で自分が執刀をし若手が助手であれば、何かあれば全部自分で対処しなければならないと思うのでどうしても守りの手術をしてしまいがちになってしまうのです。手術には「若さ」と「勇気」が大事なんです。

我々外科医は、刃物を凶器として使うのではなく、治療として使い、「外科医は唯一人間を刃物で傷つけても許される職業」という言葉のもとに、外科医としての誇りと責任感を常に持ち続けながら手術に臨んでいます。

次回は手術のお話②として、我々が手術をどうやって学び、どのうように成長していくかをお話しさせていただきます。

この手術のコラムが、これから手術を受けられようとする患者さんに少しでも安心していただける材料になれば幸いです。

 

みうら泌尿器科クリニック

三浦徹也

 

 

 

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