尿に血がまじった(血尿)~女性編
泌尿器科への受診動機として、非常に多い症状です。ここでは、女性の患者さんで目に見える赤い尿がでた場合(肉眼的血尿)を説明します。
健康診断などで尿潜血陽性を指摘された方は、「健康診断で尿検査異常を指摘」のページをご参照ください。
当院では女性が受診しやすい泌尿器科を目指して様々な取り組みを行っています。(女性の患者さんは診療時間のいずれの時間帯でももちろん受診いただけますが、毎週火曜14時-16時は女性の患者さん専用の外来時間帯としていますので時間が合われましたら是非ご利用ください。)詳細は女性泌尿器科への取り組みのページをご覧ください。
血尿がでた!さあどうしよう?
トイレで排尿したら、いきなり赤い尿がでた、、 これは誰でもびっくりします。1回血尿が出て不安になってすぐに泌尿器科に受診する方もいますが、「次も血尿だったら泌尿器科に行こう」と、いったん、ご自分で様子を見られ、次の尿が黄色透明なきれいな尿であれば安心して泌尿器科に受診されない方もおられます。
これは危ないです!!
一回でも肉眼的血尿がでれば、どこかに異常がある可能性が高いです。(ストレスや疲れで肉眼的血尿が出ることはありません)大したことのない場合もありますが、中には膀胱がんなどの悪い病気の初期症状の可能性もあります。放っておくと大変なことになる場合がありますので、肉眼的血尿の場合は、1回でもでれば必ず泌尿器科を受診するようにしましょう!
また、女性の場合は男性と違い、不正性器出血(膣からの出血)、下血(肛門からの出血)と区別がつきにくいことがあります。血尿と思えば、まずは泌尿器科で検査し特に問題がない場合は、婦人科や消化器科の受診が必要になることもあります。
<memo>ストレスで肉眼的血尿がでる?
よくある質問です。ストレスが肉眼的血尿の直接的原因になる医学的根拠はありません。一方、ストレスが消化管出血(下血、血便、吐血)の直接的原因になることは医学的根拠があります。ストレス潰瘍という言葉もありストレスが原因で消化管に潰瘍を形成し、胃潰瘍や十二指腸潰瘍となり吐血や下血を引き起こします。これと混同してか、血尿もストレスででると思われてる方も少なくないのではないでしょうか。しかし、ストレスが原因で尿路に潰瘍などの病変を直接引き起こすことはありません。長年泌尿器科診療をしていますと、肉眼的血尿が1日でてその後自然に消失したため、「ストレスだったか」と放置してしまう患者さんに少なからず遭遇します。そして、「あの時受診していればよかった」と後悔される患者さんを何人もみてきました。その経験から、肉眼的血尿がでれば「身体が病気のサインを出してくれている」と是非思っていただき、早めに医療機関を受診していただくことを推奨します。特に40歳以上の男性や痛みなど血尿以外の症状を伴わない場合は強く推奨いたします。
医療機関を受診し様々な検査をしても血尿の原因が特定できないこともあります。日本腎臓学会発刊の血尿診断ガイドラインでは、肉眼的血尿で原因が特定できない場合でも3年間は3-6ヶ月毎の厳重経過観察が推奨されています。ですから、肉眼的血尿が出れば、例えは悪いかもしれませんが、刑に例えますと最低執行猶予3年となるくらいの事象であることを是非認識していただければと思います。
肉眼的血尿の診断
問診
これが一番大事な診断ツールでして、血尿の状態を確認することにより、ある程度の疾患の予測をつけることができます。次にどの検査を行うべきかを決める上で重要です。
①まず、血尿の程度を見極めます
血尿の程度は下記の通りです。重症の場合は場合により、内視鏡下手術で緊急止血術が必要になる場合もあります。
軽症:尿に少し血が混じる程度(ピンク色)
中等症:排尿中ずっと赤い(赤色)
重症:血の塊も一緒にでてくる(赤黒色)
②痛みなど血尿以外の症状があるかないか
腰痛や排尿時痛などの症状がある場合は、むしろ良性疾患の可能性が高く、症状のない血尿の方が、膀胱がんなどの悪性疾患の可能性が高いです。
③血尿の出方~排尿の最初に濃い?最後に濃い?
女性は座って排尿しますので、血尿の出方が分からないことが多いです。排尿の最初に濃いか、排尿の最後に濃いかで疾患の予測ができることが多いのですが、女性の場合は困難です。
検査
①尿検査 尿細胞診
血尿と同時に白血球や細菌が混じっていないかを調べます。また細胞診で尿の中にがん細胞がまじっていないかを調べます。
女性の場合は、血尿の原因として膀胱炎が多く、尿検査のみで診断ができることも多くあります。
②血液検査
発熱があったり、血尿の程度が強い場合は、貧血の程度や腎機能、炎症反応を調べるために行います。
③超音波検査
身体に負担が少ない検査なので必須です。腎臓や膀胱に異常がないかを調べます。
④膀胱内視鏡検査
肉眼的血尿がある場合は行うべき検査です。尿道からカメラを入れ尿道、膀胱、前立腺の状態をチェックします。また、腎臓や尿管からの出血であれば、左右どちら側から出血しているかが分かります。膀胱内視鏡の進化により、検査に伴う痛みも以前と比べると格段に少なくなってきています。特に女性では痛みは少ないです。(→当院の膀胱内視鏡システムについてはこちら)
⑤CT検査
上記検査で原因がはっきりしない場合や、さらなる精査が必要な場合はCT検査を行います。
⑥MRI検査
特に膀胱がんや前立腺がんが疑われた場合に行います。
肉眼的血尿の原因として考えられる疾患
女性の肉眼的血尿の原因として考えられる疾患を頻度の多い順に列挙します。
①膀胱炎(詳細は膀胱炎のページをご覧ください)
女性の血尿では一番多い原因です。頻尿や排尿時の痛みを伴うことがほとんどです。膀胱炎に対して最近多くの市販薬が出ていますが、市販薬の成分は漢方成分が多く、抗生物質は入っておりません。市販薬のみで様子をみると膀胱炎が増悪し腎盂腎炎になり入院が必要になったり、いったん症状が治まってもすぐ再発したりしますので、必ず泌尿器科を受診し抗生物質による治療をうけましょう。→詳しくは膀胱炎のページをご覧ください
②膀胱がん(詳細は膀胱がんのページをご覧ください)
症状のない女性の肉眼的血尿では最も多い疾患です。
③尿路結石(詳細は尿路結石のページをご覧ください)
結石は痛みを伴うことが多いですが、痛みがない場合、血尿が最初の症状で見つかる場合も多いです。
④腎盂尿管がん(詳細は腎盂尿管がんのページをご覧ください)
膀胱がんと同じ種類のがんで、膀胱がんより発生頻度は少ないですが、血尿の原因としては多い疾患です。
⑤腎がん(詳細は腎がんのページをご覧ください)
初期の腎がんで血尿がでることは稀です。進行しますと血尿の原因となります。
⑥ナットクラッカー症候群
これは生まれつき腎臓にいく静脈が腸にいく動脈と大動脈の間に挟まれて細くなってしまっている疾患です。血尿の原因になることはありますが、病的意義はなく治療の必要はありません。この場合、激しい運動をした後に血尿が出ることが多いです。
⑦間質性膀胱炎 (詳細は間質性膀胱炎のページをご覧ください)
まれな疾患ですが、女性の多く、「尿充満時の膀胱痛」が特徴的な症状です。その他、頻尿、尿意切迫感を伴うことも多いです。
⑧特発性腎出血
血尿の原因が検査をしてもわからない場合を特発性腎出血と診断します。女性に多い疾患です。血尿の程度が強い場合が多いため、腎盂尿管がんとの鑑別が必要で、多くの場合腎盂尿管内視鏡検査を要します。最近では内視鏡で腎盂からの出血点が分かればレーザーを使って止血することも可能になりました。
⑨その他
腎臓内部の問題、いわゆる腎炎など内科的疾患が原因で血尿が出ることもまれにあります。また、腎動静脈奇形などの血管系の異常がある疾患でも血尿がでます。
文責 みうら泌尿器科クリニック院長 三浦徹也(日本泌尿器科学会専門医)