前立腺がん
当院は泌尿器がん治療のかかりつけ医としての機能をいたします。泌尿器がんでお悩みの患者さんは、お気軽にご来院ください。泌尿器がん治療経験豊富な院長が丁寧に相談にのらせていただきます。
詳細は↓のページをご覧ください。
前立腺がんについて
前立腺腫瘍マーカー(PSA)検査の普及に伴い、前立腺がんの患者さんは年々増加傾向です。アメリカでは男性のすべてのがんの中で最も患者数が多いがんであり、日本でも将来胃がんを抜いて第一位になることが予想されています。
(PSA検査の詳細や前立腺がんの診断については、「健康診断でPSAが高いと言われた」のページをご参照ください。)
しかし、PSA検査が普及したことにより早期の発見が可能となっており、治療にて完治できる前立腺がんも増えています。50歳以上の男性は、まずはPSA検査を行い、前立腺がんの早期発見に努めましょう!!
(PSA検査の詳細や前立腺がんの診断については、「健康診断でPSAが高いと言われた」のページをご参照ください。)
前立腺がんと言われたら、、
慌てる必要はありません。
前立腺がんは全身に転移のあるようなステージⅣの患者さんでも5年生存率は約70%程度あり、他のがんと比較してかなり予後が良いといえます。さらに、転移のない前立腺がんであれば、適切な治療をすれば前立腺がんが原因で命を落とすことはまずありません。
「がん」と言われると当然恐怖心がありますが、まずはそれを受けとめて、しっかり治療をすればよくなるんだ、と心を切り替えて治療に意欲的に前進することが重要です。
転移のない前立腺がんの治療
転移のない前立腺がんのほとんどは治療をすれば治ります。転移のない前立腺がんの治療の特徴は、治療の選択肢がたくさんあることです。病院で前立腺がんと診断され、さあ、治療をしましょう、という時に病院主治医から手術や放射線などの様々な治療選択肢を並べられ、迷ってしまう患者さんが多くいます。その場合は逆にいえば、「あなたはどの治療を選ばれても治りますよ」と言われているようなもので他のがんの患者さんと比べれば、いわば贅沢な悩みともいます。
転移のない前立腺がんの治療としては、大きく分けて2つあります。
- 手術療法 2. 放射線療法
まずは、この2つの長所、短所を考えたうえで自分にあった治療法を考えていくことが重要です。長年、前立腺がんの手術や治療に携わった経験からそれぞれの長所、短所を教科書的ではなく、実際の医療現場で患者さんに説明していることを中心に解説します。もっと詳しくお聞きになりたい方は、治療の相談だけでも構いませんので、お気軽に当院を受診してください。
手術療法の利点
①「前立腺がとれる」
これが手術療法の一番の利点だと思っています。実際に前立腺を摘除できるので、その前立腺について細かく病理検査を行うことができ、実際どのくらいの悪さの前立腺がんであったのかを知ることができます。つまり、今後の再発の可能性について手術療法であれば予測がつきます。
②治療後のフォローが簡便
手術をすれば前立腺がなくなりますので、PSAは0.1以下になります。術後のフォローとしてはPSA値を数か月に1回みていき、PSAが0.2を超えれば再発とすぐに判断できます。ですから再発した場合に次の治療への移行が迅速に行えます。
③手術後再発した場合、放射線治療を行うことができる
手術療法後に再発した場合、放射線治療を行うことができます。放射線治療の場合は、再発したときに手術療法はできません。つまり、転移のない前立腺がんの中でもhigh riskと呼ばれる前立腺がんがあるのですが、そのような患者さんには私は手術療法を積極的にお勧めします。high riskの患者さんは術後の再発のリスクが高いわけですので、再発後に放射線治療ができること、手術によりリンパ節を摘除できることが、大きなメリットになります。
放射線治療の利点
①恐怖心がない、痛みを伴わない
手術は当然、体に傷をつけるので術後は痛みを伴います。放射線治療は基本的に痛みは伴いません。また恐怖心も手術と比べれば少なく患者さんが受け易い治療といえます。
②尿漏れがない
手術療法の一番の合併症である尿漏れに関しては、放射線治療の合併症として起こることはありません。尿漏れが絶対困るという患者さんには放射線治療を積極的にお勧めします。
③入院が必要ない
基本的に放射線治療は外来通院で可能です。ただ平日は毎日2か月程度の通院が必要になります。しかし、最近はサイバーナイフ治療や陽子線治療など数週間で治療が終了する放射線治療も施行できるようになっています。
手術療法の欠点
術後の尿漏れ
これが手術療法の最大の欠点と考えます。ロボット手術が標準術式となった現在でもやはり一定頻度で尿漏れは起こります。ほとんどの患者さんは1年以内に改善することが多いですが、1年以上たっても改善しないこともあります。術後早期の尿漏れ対策が重要と考えており、当院では磁気刺激療法による前立腺がん手術後の尿漏れ対策を行っています。(詳しくは、前立腺がん手術後の尿漏れについてのページをご覧ください)
放射線治療の欠点
治療後の予測、再発時の診断が困難、再発時に手術ができない
放射線治療の最大の欠点は、「前立腺がとれない」ため、実際どれくらいの悪さの前立腺がんかが分からないので、再発の予測は困難です。また、治療後のPSAの値がどこまで下がるかは個人差がありますので、治療後の再発の定義もあいまいになります。さらに放射線治療後に再発した場合、手術は困難ですので、ホルモン治療しかなくなってしまいます。
以上、まとめますと、転移のない前立腺がんでも治療後の再発のリスクが高いhigh riskの患者さんには手術療法を積極的に推奨します。それ以外の患者さんについては、患者さんとお話をしてその患者さんに一番合った治療を決定していくことになります。
転移のない前立腺がんの各治療法の内容
ここでは転移のない前立腺がんの治療法につき、その内容をそれぞれの治療法別に説明します。
①手術療法
ただ、ダヴィンチの手術でも手術後の尿漏れはゼロにはなりません。ダヴィンチ手術後の尿漏れでお困りでしたら一度当院にご相談ください。(詳しくは、前立腺がん手術後の尿漏れについてのページをご覧ください)
②放射線療法
a. 外照射
外照射とは体外から放射線を照射する方法です。外照射の治療機械の発展はすさまじく、より合併症の少ない治療が可能になってきています。
現在保険適応で可能な治療法は、強度変調放射線治療(IMRT)、粒子線治治療、サイバーナイフ治療、陽子線治療などがあります。幸い、神戸ではどの治療も可能です。サイバーナイフと陽子線は治療期間が短く、数週間で治療ができる利点があります。放射線治療の種類でお悩みの方は当院を受診していただければ詳しく説明いたします。
b. 小線源治療
これは前立腺の中に放射線物質を埋め込む治療です。施設によりますが4-5日の入院で行うことが多いです。基本的には早期のリスクの低い前立腺がんに適応となります。
③手術、放射線以外の治療法
a. 無治療経過観察
前立腺がんは進行の遅いがんですので、一定の条件をみたせば、治療せずにPSAの値で経過観察を行うことも可能です。しかし、その場合は定期的な前立腺生検が必要になります。
b. ホルモン治療
ホルモン治療の詳細は、転移のある前立腺がんの治療の項で述べます。80歳以上の高齢者や合併症をお持ちの患者さんには、手術や放射線治療よりホルモン治療をお勧めすることがあります。手術や放射線治療に比べて安全に行える治療です。しかし、ホルモン治療では前立腺がんを完治させることは難しく、期待余命が10年以上あるような若年者の転移のない前立腺がんの患者さんにはお勧めできません。
また、放射線治療を選択された患者さんは一定期間ホルモン治療を放射線治療と併用して行う必要がある場合があります。
転移のある前立腺がん
前立腺がんは全身に転移のあるようなステージⅣの患者さんでも5年生存率は約70%程度あり、他のがんと比較してかなり予後が良いといえます。
転移がある前立腺がん、ステージⅣの前立腺がんでは、ホルモン治療を行うことになります。前立腺がんは男性ホルモンを栄養分にして発育するため、いわゆる去勢をすれば一気に前立腺がんは衰退していきます。ホルモン治療とは、男性ホルモンを去勢状態まで低下させる治療法です。具体的には男性ホルモンを低下させるホルモン注射を1-3か月毎に行い、内服のホルモン治療剤も併用して投与する治療法です。抗がん剤と違い副作用はかなり少ない治療であり、高齢者や基礎疾患をお持ちの患者さんでも安全に行うことができます。
そして、なんといってもこのホルモン治療はかなりよく効きます。このホルモン治療の効きの良さが、転移のある前立腺がんの患者さんが長く生きることができる一番の要因です。最近では新しいホルモン治療薬も次々と開発され、治療選択肢も増えてきました。その分、治療の切り替えのタイミングなどは主治医の腕の見せ所であり、医療者側もやりがいのある治療のひとつです。ホルモン治療はよく効きますが、残念ながらずっと効いているわけではありません。いずれ効果が悪くなるので、そのタイミングを逃さず、適切な時期に次の治療薬へ変更することが重要です。最終的には抗がん剤治療を行う必要がでてくる場合もありますが、十分通院で治療できる抗がん剤治療になりますので、転移のある前立腺がんの治療は、治療期間が長い分、患者さんの「生活の質」をいかに保ったまま治療を継続できるかが最も重要であり、主治医の腕の見せ所だと考えています。
ホルモン治療を行っている前立腺がん患者さんは基本的に生涯、ホルモン治療を行うことになり、治療期間が長い分、患者さんとの付き合いも長くなります。当院では、がんの「かかりつけ医」として長く良い信頼関係をもって治療し、疑問点などを気軽に相談できるような医師ー患者関係を築けるよう努めます。
文責 みうら泌尿器科クリニック院長 三浦徹也(日本泌尿器科学会専門医)