メニュー

前立腺がん手術後の尿漏れでお悩みの患者さんへ

当院では「①ピラティスによる骨盤底筋トレーニング+②磁気刺激治療」の2本立てをメインに前立腺癌手術後の尿もれに悩む患者さんに対して、積極的に治療を行っています。

 

(前立腺がんについての詳しい説明はこちらのページをご覧ください。)

前立腺がん手術後になぜ、尿もれは起こる?

前立腺がんに対して手術(前立腺全摘)をすると、どうしても尿もれを経験します。

前立腺の尿道側には尿道括約筋(尿がもれないように締める筋肉)が張り付いており、上図のように、手術の際はがんの取り残しがないように前立腺の尿道側の切除line(図の赤〇)で括約筋を一部切除します。そのため、手術直後は括約筋の機能が一過性に落ちほとんどの人が尿もれ(腹圧がかかったときに知らぬ間に漏れてしまう)を経験します。

このように、前立腺がんの手術はまさに「がんの根治性」と「括約筋の機能温存」のせめぎあいになり、術式も様々な工夫がなされてきました。現在は、ダヴィンチサージカルシステムという医療用手術支援ロボットを使った手術が標準的となっています。ロボット支援手術では、尿道切断時に出血が少なく、鮮明な視野で手術ができ、十分な尿道の長さの確保、括約筋温存ができるようになりました。開腹手術、ロボット手術合わせて300例を超える前立腺全摘を経験しましたが、やはりロボット支援手術ではより高度な手術ができるようになったと痛感しています。しかし、術後の尿もれに関しては開腹手術の時よりは減りましたが、依然ゼロにはできません。手術の工夫を色々しても、やはり漏れる患者さんは漏れます。これが外科医としての本音です。患者さん個々の括約筋機能の潜在能力が術後尿もれに大きく関わっていると考えています。(この潜在能力は術前には分かりません、、)

ですので、漏れてしまったら、括約筋機能を術後早い段階で正常に戻すような対策をすることが必要になります。当クリニックでの対策は、以下の対策、治療方針の項で詳細に記述していますのでご覧ください。

前立腺がん手術後の尿もれはどれくらいの頻度で起こって、いつ治る?

前立腺がん術後の尿もれの頻度については施設によって色々な報告がありますが、経験上大体以下の割合くらいではないかと思います。

退院時にパッドなし 15% 

1か月後にパッドなし  30%  パッド1日1枚 60%

3か月後にパッドなし 50%  パッド1日1枚 80%

6か月後にパッドなし 70%  パッド1日1枚 95%

1年後にパッドなし  75%  パッド1日1枚 97%

我々外科医はパッド1枚は許容範囲という暗黙の了解?があり、パッド1日1枚までは尿漏れなしとすることが多いです。(患者さんにとってパッドなしとパッド1枚では大きく違うとは思いますが、、)ですので手術の説明の際は、大体半年くらいで9割の患者さんが漏れなくなりますと説明することが多いと思います。

この頻度をみて一番大事なことは、術後6か月までは尿漏れは急速に改善していくが、6か月を超えると1年経ってもあまり改善がみられないということです。術後半年で漏れがよくならない人は危険信号です。

このように術後早い段階で尿漏れの対策はしっかり行うことが非常に大切です。

当クリニックでの対策、治療方針

前立腺がん手術後の尿もれの対策、治療は「尿道括約筋、骨盤底筋のリハビリ」の一言につきます。

当院では「①ピラティスによる骨盤底筋トレーニング②磁気刺激治療」 この2本立てをメインに治療をすすめています。

①骨盤底筋体操の再指導、ピラティス講座による指導

骨盤底筋トレーニングは前立腺癌術後尿もれにおいて最も効果があり重要なリハビリになり、術後早期から正確に行うことが非常に重要です。手術施設で骨盤底筋体操の説明はほとんどの患者さんが受けられています。しかし、多くの病院では看護師が簡単なパンフレットを渡し口頭で説明するだけなのが現状です。病院泌尿器科医も癌のフォローはしっかり行いますが、骨盤底筋トレーニングについて十分な説明を行うことはほとんどないでしょう。「肛門をしっかりしめましょう」のような指導を受けることがほとんどですが、肛門をしめても尿道括約筋のトレーニングにはなりません。女性では膣をしめます。女性に肛門をしめるような指導はしません。男性は膣がないため、意識してしめる部位がないため肛門といっているだけなのです。実際、当院に受診された患者さんに骨盤底筋トレーニングをしてもらうと、頑張って肛門をしめ、同時に腹筋を使ってしまっている患者さんが非常に多いです。腹筋をはじめとするアウターマッスルを使ってしまうと尿もれに対しては全くの逆効果になってしまいます。

そもそも男性の骨盤底筋トレーニングについては確立されたものがありません。なぜなら、腹圧性尿失禁(お腹に力が入ったときにおこる無意識な尿もれ)は普通は男性で起こることはないからです。女性では出産や加齢に伴い腹圧性尿失禁が約半数の方に起こるとされています。しかし、男性は膀胱の下に前立腺があり、前立腺が尿をせき止めてくれるため、腹圧性尿失禁は起こらないのです。つまり、男性の場合は前立腺を手術で摘除した男性にしか腹圧性尿失禁は起こらないのです。このように、男性の腹圧性尿失禁は限られた男性(前立腺を摘除した男性)にしか起こらないため、トレーニング法が確立されていないわけです。本来は我々泌尿器科医が理学療法士等と連携して前立腺摘除後の骨盤底筋トレーニングを確立しなければならないのですが、全くといってよい程できていないのが現状です。

そこで、当院ではピラティスインストラクターと連携し、ピラティスを用いて骨盤底筋トレーニングの指導を行っています。

☆前立腺癌術後尿もれに悩む患者さん専用の骨盤底筋トレーニングピラティス講座について

「ピラティス」とは、考案者のドイツ人Joseph Pilates(ジョセフ・ピラティス)さんの名前から名付けられた、エクササイズ・メソッドです。ジョセフさんが自らの病弱な身体を改善させるために考案したエクササイズ法で、それが戦時中の負傷兵が寝たままリハビリができるエクササイズとして発展し全世界に広がっていきました。ヨガとの違いは、ヨガは呼吸法、瞑想で心と体を結びつけ、心身が最も安定した状態をつくることを一番の目的としており、「修行」の意味合いが強いですが、ピラティスは、純粋なエクササイズです。特にピラティスはインナーマッスルを意識して鍛えること、骨盤や背骨、肩など骨格のゆがみや偏りを正しい位置へと整えることに重点を置いており、骨盤底筋トレーニングには最適なエクササイズ法だと考えられます。ピラティスのエクササイズは、ジムのトレーニングのように体の一部分に「大きな負荷」を加えて強くするものではなく、リハビリを目的に作られたエクササイズであるため、運動経験や老若男女に関わらず安心して続けられます。

女性ピラティスインストラクターと連携して、前立腺癌手術後の男性にあったメニューを考え皆様に提案していきます。皆様同じ悩みをもった患者さんですので、恥ずかしいこともなく皆様楽しくトレーニングに励んでおられます。受けてみようと思われる方は一度当院を受診してみてはいかがでしょうか。

(1講座90分です。初回体験無料 料金はチケット制です。1回チケット3000円 4回チケット10000円 8回チケット18000円 すべて税込、現在は水曜日に月2回4講座実施しています。日時の詳細は当院受診時に説明させていただきます。)

②磁気刺激装置による治療

当クリニックでは磁気刺激装置による骨盤底筋リハビリによる尿もれ治療を行っています。25分間、磁気刺激装置に座っているだけの治療ですので、続けやすい治療となります。女性の腹圧性尿失禁に対して効果のエビデンスがある治療であり、当院では前立腺癌術後の尿もれに悩む男性患者さんに対しても積極的に行っています。週1-2回の6週間を1サイクルとして行い効果を判定します。効果があれば回数を減らしていき、上記の骨盤底筋トレーニングとの併用で尿もれの減少を目指します。  

磁気治療の詳細はこちら

 

③内服加療

補助的な治療として薬剤もありますが、あくまでも補助的な治療であり薬剤だけでは改善しません。上記のリハビリ加療がメインとなります。

重症尿失禁の患者さん

術後6か月以上経過しても1日400g以上の尿がもれるような患者さんは、上記治療をしても改善がみられないこともあります。前立腺全摘手術後にこのような重症尿失禁になることはまれですが、ゼロではありません。

そのような患者さんには人工尿道括約筋埋め込み手術を推奨しています。この手術は2012年4月から本邦でも保険適応となっていますが、まだ世間の認知度は低いのが現状です。当クリニックでは人工尿道括約筋埋め込み手術の症例数が多い連携施設へ速やかにご紹介させていただきます。

補足;前立腺がん手術後の勃起障害のお悩みについて

前立腺がん手術にて性機能温存手術をうけたが、勃起機能が戻らない患者さんは、「陰茎リハビリ」が必要です。ED治療薬などによる陰茎リハビリを指導しますので、一度当クリニックを受診してください。

 

文責 みうら泌尿器科クリニック院長 三浦徹也(日本泌尿器科学会専門医)

 

 

 

 

 

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME