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間質性膀胱炎について

間質性膀胱炎とは?

聞きなれない病名ですが、この疾患でお悩みの患者さんは比較的多いです。一般的に「膀胱炎」といえば、女性に多い細菌感染に伴う膀胱の炎症を指し、これは抗生物質を投与すれば速やかに治癒します。しかし、「間質性膀胱炎」は細菌感染とは関係なく膀胱に慢性的な炎症を生じてしまう難治性の疾患です。重症例では、泌尿器科疾患で唯一、国の難病指定を受けている疾患です。

日本で治療中の患者数は約 4,500 人(0.004%:全人口の 10 万人あたり 4.5 人)と推定されています。女性に多い疾患で、女性の罹患率は男性の約 5 倍といわれています。

間質性膀胱炎の原因はいまだ解明されておらず、原因が解明されていないため、当然治療も難しく、難治性ということになります。しかし、2021年4月にジメチルスルホキシド(DMSO ジムソ?)膀胱内注入療法が保険適応となり、その治療効果に期待がかけられています。

間質性膀胱炎の症状

典型的な症状は「尿充満時の膀胱痛」です。つまり、「おしっこを我慢すると下腹部が痛くなり、排尿すると痛みが取れる」というのがが間質性膀胱炎の典型的な症状としてあげられます。その他、頻尿や尿意切迫感など、過活動膀胱と同様な症状もみられます。尿を我慢すると過活動膀胱では尿が漏れる・漏れそうになりますが,間質性膀胱炎では不快感や痛みが生じる・生じそうになることが多いです。間質性膀胱炎で頻尿が多いのは,疼痛を回避するために頻回に排尿しているからかもしれません。

間質性膀胱炎は簡単に診断できる疾患ではありませんので、過活動膀胱と診断され薬剤を投与されたが症状が改善しない患者さんの中の一部には、間質性膀胱炎の患者さんが含まれていると考えられます。

→過活動膀胱の詳しい説明はこちら

それでは、間質性膀胱炎はどのように診断されるのかを次の項で説明いたします。

間質性膀胱炎の診断

間質性膀胱炎の診断は、「膀胱内視鏡検査」により行います。逆に言えば、膀胱内視鏡検査をしなければ間質性膀胱炎の診断はできません。

症状から間質性膀胱炎を疑えば、膀胱内視鏡検査を行い、間質性膀胱炎特有の膀胱粘膜の病変をとらえることにより診断が可能となります。間質性膀胱炎特有の膀胱粘膜病変を「ハンナ病変」と呼び、特徴的なびらん病変で、間質性膀胱炎を治療経験のある泌尿器科医であれば診断が可能です。当院の膀胱内視鏡はNBIといわれる画像技術を搭載しており、微小血管での色コントラストが向上しより微細で繊細な観察画像が得られるシステムにて観察が可能で、「ハンナ病変」についてもより正確にとらえることが可能です。

→当院の膀胱内視鏡システムについてはこちら

間質性膀胱炎の治療

1. 膀胱水圧拡張術+ハンナ病変焼灼術

古くから診断および治療の目的で行われてきた治療です。奏効率は約 50%,奏効期間は 6 カ月未満との報告が多いですが,1 年以上の長期の有効性も報告されています。手技としては,腰椎麻酔または全身麻酔下に生理食塩水を自然落下させながら膀胱を充満させ、ハンナ病変部を切除および焼灼します。反復治療を要することが多いですが,症状緩和には有効です。一般的には入院による治療となります。

2. ジメチルスルホキシド(DMSO)膀胱内注入療法

ジメチルスルホキシド(DMSO)は炎症抑制,筋弛緩,鎮痛,コラーゲンの分解,肥満細胞の脱顆粒などの作用があるといわれ,間質性膀胱炎 の治療として古くから使用されてきました。有効性の根拠があり,重大な副作用は少なく、外来での実施が可能な治療です。わが国では臨床試験中でありましたが、2021年4月に保険適応となり、保険により医療を受けることが可能になりました。

ジムソ?(ジメチルスルホキシド)膀胱壁内注入療法の実際

①ジムソ注入時の疼痛を緩和する目的で、尿道から細いカテーテルを入れ膀胱内に麻酔薬を注入し15分程度待ちます。

②麻酔薬を除去後、再度尿道から細いカテーテルを入れ膀胱内にジムソを注入し、15分尿を我慢してもらいトイレで排尿してもらいます。

③2週間に1回、計6回の投与を行います。

3. 食事療法

コーヒー,紅茶,チョコレート,アルコール,トマト,柑橘類,香辛料,ビタミン Cが、多くの 間質性膀胱炎患者さんにとって症状を増悪させる飲食物とされています。ただ、症状を悪化させる食品は個人によっても異なると考えられますし、食事療法には十分なエビデンスがありません。間質性膀胱炎患者さんに好ましくない食物として挙げられる食材はかなりたくさんあり、そのすべてを摂取しないようにするのはかなり困難です。むしろ余計に患者さんにとってストレスとなると思いますので、禁止食については患者さん個々で設定してあげることがよいと考えています。

4.内服薬物治療

様々な内服薬物治療が間質性膀胱炎に古くからなされてきましたが、特効薬は残念ながら存在しません。代表的な薬剤を下記に示します。

①アミトリプチリン(抗うつ薬)

②スプラタスト(抗アレルギー薬)

以上が、間質性膀胱炎に対して処方する代表的薬剤です。

その他、鎮痛剤やステロイドを投与することもあります。

 

文責 みうら泌尿器科クリニック院長 三浦徹也(日本泌尿器科学会専門医)

 

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