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ボツリヌス毒素(ボトックス®)膀胱壁内注入療法~難治性過活動膀胱に対する新しい治療

薬剤で効果が乏しい難治性過活動膀胱患者さんに吉報!!

2020年にボツリヌス毒素(ボトックス®)膀胱壁内注入療法が保険適応されました。

病院で薬剤を処方され内服しても、トイレに行くまでに尿が我慢できない(尿意切迫感、切迫性尿失禁)ことが改善しない患者さんは、ボトックス膀胱壁内注入療法を選択肢の一つとして考えましょう。

ボトックス膀胱壁内注入療法とは

当院での方法

実施に際しては膀胱局所麻酔(麻酔薬の膀胱内注入:麻酔の際に痛みはありません)で行います。(男性の方は仙骨硬膜外麻酔にて行います)

麻酔後、膀胱鏡という内視鏡カメラを用いて膀胱の壁内(筋肉)にボトックスを注射します。膀胱の筋肉に細い針でボトックスを20箇所に分けて注入します。(当院の膀胱内視鏡システムに関してはこちら→)

施行中の痛みは、針刺入時に鈍い痛みを感じる方もおられますが、痛みをあまり感じない方がほとんどです。

手術時間は10分程度です。

入院は必要ありません。外来にて治療可能です。術後、トイレで排尿していただき残尿がないことを超音波で確認し帰宅していただきます。

適応となる患者さん

既存の治療薬で十分な効果が得られない過活動膀胱の患者さんが対象です。
具体的には、

  • 4週間以上の内服治療を受けているが、十分な効果がなく尿意切迫感や尿失禁が改善されない。
  • 内服薬が副作用のため服薬できない。

の患者さんが対象になります。

その他、超音波検査による残尿量や尿検査にて尿路感染を併発していないことなども条件があります。

最終的には診察後に、院長が慎重にその適応を検討し、治療を受ける患者様と十分な話し合いを行った上で治療を行っております。

効果

効果は通常、治療後2~3日であらわれ、4~8ヵ月にわたって持続します (効果の程度や持続期間には個人差があります)。効果が不十分な場合、または薬の効果が弱まり症状が再発した場合は、前回投与より4ヶ月経っていれば再投与を考慮します。本邦での臨床試験における効果としては、ボトックス初回投与の患者さんの2週間後の評価で、1日尿失禁回数:平均 -3.57回の減少 1日尿意切迫感回数: 平均-4.11回減少、1日排尿回数: 平均-2.31回減少というデータが出ています。詳しくは当クリニックでお気軽にご相談ください。

副作用

内視鏡を挿入し針を膀胱壁に刺入しますので、処置後は血尿がでることがありますが自然に軽快していきます。国内で行われた臨床試験では、尿が出しにくくなる排尿困難を起こした人は9%、尿路感染が9%、尿閉(尿がでなくなる)が5%で見られています。排尿困難や尿閉の副作用の多くは男性にみられ、女性では少ない傾向にありますので、女性の方がより安全に施行できる治療と考えています。

また、実際の臨床の場では、副作用が出ないであろう患者さんをより選択して行いますので、治験のデータよりも副作用は少なくなると思われます。ヨーロッパでの実際の臨床経験の多数例のデータでは、尿路感染0.4%、尿閉1%であり、治験よりも少なくなっています。

ボトックス膀胱壁内注入療法Q&A 

Q: 治療後気を付けることはありますか?

A: 治療当日は入浴や激しい運動、飲酒など、血流がよくなる行為は控えてください。翌日以降は、通常どおりの日常生活を送れます。血尿が続く場合は改善するまで控える必要があります。また、男性の患者さまは仙骨硬膜外麻酔を行いますので、当日のお車の運転は控えてください。

Q: 副作用が怖いですが、実際のところどうですか?

A: ボットクス療法で問題になる副作用は尿閉(尿が出なくなる)です。実際の頻度は1-5%程度と低く、特に女性では男性よりも尿閉になる可能性は低いです。もし尿閉になれば、「自己導尿」といって、自分自身で定期的に尿道に管を入れて尿を出していただく手技を身につけてもらいます。数か月後、ボトックスの効果が減弱すれば自分で排尿できるようになることがほとんどです。→自己導尿についてはこちら

Q: 過活動膀胱の内服治療をせずにボトックス療法を行えますか?

A: 内服治療なしではボットクス療法は行えません。過活動膀胱治療の第一選択は、内服治療です。内服によって改善する患者さんが多いですので、まずは内服治療を行います。内服治療を行っているのにも関わらず治療効果が低く、過活動膀胱の症状で日常生活が制限され、日々悩まれている患者さんにボトックス療法をお勧めします。

 内服薬が副作用で飲めない場合は、数種類の過活動膀胱治療薬を試してみます。どれも副作用で内服ができない場合は、ボトックス療法の適応となります。

Q: ボットクス療法は何回まで行えますか?

A: 特に回数制限はありません。治療効果が弱まってきましたら、再投与を行います。治療間隔は6-12か月のことが多いです。ボトックス療法をくりかえし行った場合、きわめてまれですが、体内で 抗体がつくられ、それまで得られていた治療効果が得られなくなることがあります。複数回の治療を受けたのち、明らかに以前より効果が弱まっていると感じましたら、医師に申し出てください。

Q: 初回の治療で効果があまりなかった場合、再治療はできますか?

A: 初回投与から4か月空けて再投与は可能です。しかし、初回の投与で効果不十分な場合の再投与の治療効果については明らかなエビデンスはありません。

Q: 妊娠中や授乳中でも治療は行えますか?

A: 妊娠・授乳中は治療は行えません。また、ボトックス治療後3か月は避妊に必要な措置をとっていただきます。

 

文責 みうら泌尿器科クリニック院長 三浦徹也(日本泌尿器科学会専門医)

 

 

 

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