腎がん
当院は泌尿器がん治療のかかりつけ医としての機能をいたします。泌尿器がんでお悩みの患者さんは、お気軽にご来院ください。泌尿器がん治療経験豊富な院長が丁寧に相談にのらせていただきます。
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腎がんについて
世間で「腎臓がん」と呼ばれているがんです。腎細胞がんとも呼びます。腎臓は腎実質と腎盂から構成されていますが、腎がんは尿を作る工場である腎実質に生じるがんです。腎盂がんとは異なります。(→腎盂尿管がんの詳細はこちら)
腎がんにかかる割合は、10万人に約6人で、がん全体のうちの約1%を占めます。やや男性に多く、年齢とともに増加します。40歳代の若年層での発症も比較的多いがんです。腎がんの発生には免疫の影響があり、免疫の低下を及ぼす肥満や喫煙、生活習慣病は腎がん発症のリスクとなり、また透析治療を長期間行っている人も、腎がんにかかりやすいといわれています。また、フォン・ヒッペル・リンドウ病などの遺伝性疾患の患者さんに腎がんが発生しやすいことが分かっています。
腎がんの症状
腎がんは基本的には症状がありません。進行すると血尿や腰痛、疲労が起こったりします。初期の腎がんには症状がないため、健診や人間ドックの超音波検査やCT検査で偶然発見され我々のところに紹介されることがほとんどです。人間ドックの普及により初期の腎がんが発見されるケースが増えてきました。
腎がんの診断
泌尿器科に受診されたときは、ほとんどは健診等の画像検査で腎臓に腫瘍があると診断されて来られるケースが多いです。腎臓にできた腫瘍が腎がんなのか良性の腫瘍なのかを判断するために、超音波検査や造影CT検査が必要になります。
腎がんの治療
転移のない腎がん
転移のない腎がんの標準治療は手術療法です。腎臓は左右に2つあり、がんのできた方の腎臓を摘除する腎摘除術が以前は一般的でした。腎臓は2つあるため、片一方を摘除しても基本的には体に大きな影響は残りません。しかし、腎臓が2つある方に比べると術後の腎機能は少し低下します。とくに若年者で手術後数十年生きられる方においては、腎摘による腎機能低下が将来的に高血圧や心血管系疾患を発症するリスクになる可能性もあるため、腎臓を温存する手術が最近主流になってきています。つまり、腎がんのみをくり抜くように摘除する腎部分切除術という手術が、手術の技術の進歩により可能になってきました。
ロボット支援下腎部分切除術
腎部分切除術は腎摘除術よりも術後合併症の頻度は高いため、高齢者や合併症をお持ちの方は、リスクとベネフィットを考えたうえで術式の選択をすることが大切です。また、10cm以上の大きな腫瘍は部分切除は困難ですので、腎摘除術の適応となります。腎摘除術は腹腔鏡手術で行う事が標準ですが、腫瘍があまりに大きい場合や静脈に腫瘍が浸潤しているような場合は開腹手術で行う必要があります。
手術後のフォロー
腎がんを手術で取り除いた後は、全身のCT検査を3-6か月毎に1回行い、転移や再発の有無をチェックします。通常のがんであれば術後10年以上たてば、完治とみなしフォロー終了になることが多いですが、腎がんに関しては術後10年以上経過してから、転移するようなケースも目にするため、10年以上経過しても年1回程度はCT検査でフォローされることをお勧めしています。
転移のある腎がん
腎がんは初期では症状がないため、見つかった時にはすでに進行し他の臓器に転移していたということもよくあります。転移性腎がんの治療は、ここ数年で飛躍的に進化を遂げました。それは免疫チェックポイント阻害剤の登場です。2018年に京都大学の本庶先生がノーベル賞を受賞したことで有名になったニボルマブ(オプジーボ?)が代表的な薬剤です。転移性腎がんの治療では、免疫チェックポイント阻害剤の有効性が証明されており、この薬剤を使用した治療が主流になっています。特に転移性腎がんで第一選択となるニボルマブとイピリムマブ(ヤーボイ?)の併用療法の有効性は非常に高く、治験のdataでは治療をし始めてからの生存期間の中央値が48か月との結果がでました。(従来の治療では26か月であり、なんと約2年程度も延長しています。)しかも、完全にがんが治る人が、10人に1人の確率で出てきています。この結果は以前では考えられない結果です。私が医者になったころは転移性腎がんの治療薬は2.3種類しかなく、1年程度生存すれば長く生きたなあ、と思うくらい転移性腎がんは予後の悪いがんでした。免疫チェックポイント阻害剤の登場により、転移性腎がんの治療は大きく変革したといってよいでしょう!!