性病のお悩み~性感染症認定医が解説します
性感染症はコロナ禍でも減少することなく、むしろ梅毒にいたっては急増しています。症状がある場合やパートナーが感染した場合、性感染症は保険適応で検査、治療ができます。性病検査キット等による自己判断は危険ですので、必ず専門医療機関を受診してください。
コロナウイルス感染症によって人々の感染対策の意識が変化し、インフルエンザを筆頭にコロナウイルス以外の感染症は軒並み減少しました。しかし、性感染症はコロナ渦でも全く減少することはありませんでした。以下に当院の2022年の主な性感染症の推移を示します。
表:当院の性感染症新規発生数の月別推移 2022年
2022年 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 |
男子尿道炎(淋菌、クラミジア、マイコプラズマ) |
72 |
75 | 96 | 113 | 101 | 129 | 135 | 139 |
梅毒 | 5 | 13 | 12 | 7 | 9 | 9 | 8 | 12 |
性器ヘルペス | 11 | 11 | 11 | 16 | 18 | 20 | 17 | 23 |
*自分で検査して判断するのは危険です。
最近、ネットやSNSで特に梅毒の急増が話題になっており、これに乗じて検査のみ行う自費検査クリニック業者やインターネットによる検査キットの販売業者が急増しています。無症状の場合はこれらの業者を利用するのも許容できますが、症状がある場合は、このような業者を利用し検査のみ行って自己判断するのは非常に危険ですので、必ず専門医療機関を受診し治療を行ってください。クラミジア(特に男性)や梅毒初期では感染していても検査で陰性になることも珍しくありません。また、クラミジアの検査はPCR検査が最も感度が高い検査ですが、早く検査結果を知りたいという患者さんの気持ちに乗じて、検査後すぐに結果がでるような検査キットによるクラミジア検査を行っているクリニックもあります。このようなクラミジア即日検査はさらに検査感度が落ちますので注意してください。
症状がある場合やパートナーが感染した場合は、保険適応で検査・治療ができますので、必ず保険診療が可能な専門医療機関を受診し治療を行ってください。性感染症において検査はあくまで補助的なものであり、検査よりも適切な抗菌薬による治療が重要です!!
性感染症認定医とは
日本性感染症学会が、基本領域学会の専門医資格を取得している医師のなかで、性感染症の病態解明・予防・診断・治療の進歩に即応した医師に、認定医の資格を付与したものです。兵庫県では泌尿器科、婦人科の医師を中心に院長含め19名が認定されています。(2020年現在)→日本性感染症学会HP 認定医について
クラミジアや淋菌は最近、薬剤耐性菌(従来の抗菌薬が効かない菌)が増加していたり、梅毒感染者が急激に増加していたり、性器ヘルペスの新たな再発治療ができるようになったりと、性病の治療は刻々と変化していってます!!
性病の診断・治療は、最新の知識が豊富な医療機関での検査・治療をお勧めします。
大事なパートナーを守るためにも少しでも性感染症の心配がありましたら、専門的知識を持った医療機関での検査・治療をお勧めします。
性病・性感染症治療の流れ
「性病の診断・治療に、医療保険が使えますか?」という質問をよく耳にします。答えは当然、「使えます!」です。
性病は保険適応の疾患です!!
また、症状がなく性病検査のチェックだけしてほしい場合や健康保険を使いたくない場合は自費での検査・治療も可能です。
性感染症は立派な病気であり、淋菌感染症、クラミジア、梅毒、性器ヘルペス、コンジローマ、HIVは感染症法で5類感染症に分類され、厚生労働省が国民に発生動向を知らせる必要のある感染症として認定し、毎年発生動向調査を公開しています。インフルエンザや麻疹などと同じです。ですから当然、保険診療が可能です。
しかし、発熱や咳などの症状がない人にインフルエンザの検査をしてくれないのと同じで、性感染症も症状がなければ保険診療で検査はできません。性感染症の場合は、心配だから検査をしてほしいという方や、性風俗従事者の定期検査、最近では結婚前にブライダルチェックとして検査してほしいなど、症状がなくても検査を希望される方が多くいるのが特徴です。そのような場合は自費診療での検査となります。自費診療で検査をしたときに陽性結果が出た場合は、治療が必要になりますが、その際は保険診療で治療することが可能です。
パートナーが性感染症(特に淋菌、クラミジア、梅毒)に感染したことが分かった場合は、ご自身も検査、治療を行うことを強くお勧めします。その際は基本的に保険診療で行うことが可能です。
また、保険を使用した場合、家族や職場に知られるのが困るという患者さんが多いのも性感染症の特徴です。そのような患者さんには症状があっても自費診療で診断、治療をすることもあります。
性感染症診断・治療のパターン
1.男性で尿道が痛いなど症状がある場合:検査、治療、治療後の治癒確認、すべて保険診療が可能です。
*「喉が痛い」などの咽頭炎症状が性感染症による咽頭感染(淋菌性咽頭炎やクラミジア性咽頭炎)で起こることは極めてまれですので、咽頭症状での淋菌・クラミジアの咽頭検査を保険診療で行うことはできません。耳鼻咽喉科からの検査依頼がない限りは自費検査となります。検査で陽性がでた場合、治療、治療後の治癒確認は保険診療が可能です。
2. 症状がなくて検査だけしてほしい場合:検査は自費診療になります。検査で陽性がでた場合、治療、治療後の治癒確認は保険診療が可能です。
3.症状はあるが保険を使いたくない場合:検査、治療、治療後の治癒確認、すべて自費診療で行うことが可能です。
当院はweb問診システムを導入し、プライバシーに配慮した治療を心がけています。
初診の方は、ホームページから問診をweb上で事前に入力できます。(問診表をダウンロードして持参いただく必要もなく、入力内容が自動で当院電子カルテに反映されます。)web問診をご利用いただければ、受付での問診票のやりとりなどが不要になり、よりプライバシーに配慮した受付・診察が可能ですので、ぜひweb問診をご利用ください。
保険診療時の検査費用
性感染症の種類により異なりますが、診察費・検査費・治療費(処方箋代)を含め、3割負担の患者さんで、初診時の自己負担金(窓口支払金)は2000-5000円程度です。
当院の自費診療時の検査費用
性病検査の自費診療は以下に該当する方に行います。 (web問診で事前に自費診療希望にチェックいただくか、受付もしくは診察時に自費診療希望の旨をお伝えください) ・症状はないが性病のチェックをしたい方 ・健康保険を使いたくない方(自費であればご自宅や勤務先に医療費通知書が届くことはありません) ・結婚前のブライダルチェックをしたい方 ・性風俗従事者の定期検査 当院では、提携クレジットカードによるお支払いが可能です。 |
診察費として1000円(税込み)がかかります。
自費診療の患者さんの検査結果は、電話による結果報告が可能です。検査結果用紙が必要な方は直接ご来院ください。(検査結果説明のみの場合、診察費用はかかりません)
検査の結果、陽性であれば保険診療による治療が可能ですので必ず治療を行ってください。(自費での治療をご希望の場合は、検査結果説明時にお伝えください)
以下、当院の自費診療時の検査費用を示します。(保険診療時は異なります)
1. 淋菌・クラミジア
a, 尿(男性)もしくは子宮頚管(女性)
淋菌検査 | 2500円(税込み) |
クラミジア検査 | 2500円(税込み) |
淋菌+クラミジア同時検査 | 3500円(税込み) |
b. 咽頭うがい液検査
*咽頭検査につきましては、検査前2時間は、食事・うがい・歯みがき・ガムをかむ事を避けて下さい。(飲み物は構いません。)
淋菌検査 | 2500円(税込み) |
クラミジア検査 | 2500円(税込み) |
淋菌+クラミジア同時検査 | 3500円(税込み) |
c. 尿(男性)もしくは子宮頚管(女性)+咽頭うがい液
*咽頭検査につきましては、検査前2時間は、食事・うがい・歯みがき・ガムをかむ事を避けて下さい。(飲み物は構いません。)
淋菌検査 | 4000円(税込み) |
クラミジア検査 | 4000円(税込み) |
淋菌+クラミジア同時検査 | 5000円(税込み) |
2. 血液検査
梅毒 | 2500円(税込み) |
B型肝炎 | 2500円(税込み) |
C型肝炎 | 2500円(税込み) |
HIV | 2500円(税込み) |
3. マイコプラズマ・ウレアプラズマ
マイコプラズマ・ウレアプラズマ検査(尿 or子宮頚管) | 7000円(税込み) |
4. セット検査費用
*咽頭検査につきましては、検査前2時間は、食事・うがい・歯みがき・ガムをかむ事を避けて下さい。(飲み物は構いません。)
1. スタンダード性病セットA (男性におすすめ) |
淋菌+クラミジア同時検査(尿)、梅毒、B型肝炎、C型肝炎、HIV | 12000円(税込み) |
2. スタンダード性病セットB (女性におすすめ) |
淋菌+クラミジア同時検査(子宮頚管+咽頭うがい液)、梅毒、B型肝炎、C型肝炎、HIV | 14000円(税込み) |
3. オール性病セット A (男性におすすめ) |
淋菌+クラミジア同時検査(尿)、梅毒、B型肝炎、C型肝炎、HIV 、マイコプラズマ・ウレアプラズマ | 18000円(税込み) |
4. オール性病セット B (女性におすすめ) |
淋菌+クラミジア同時検査(子宮頚管+咽頭うがい液)、梅毒、B型肝炎、C型肝炎、HIV、マイコプラズマ・ウレアプラズマ | 20000円(税込み) |
5. 性病セットC 簡易 (淋クラ梅毒) |
淋菌+クラミジア同時検査(尿 or 子宮頚管)、梅毒 | 5000円(税込み) |
6. 性病セットD 簡易 (淋クラ梅毒) |
淋菌+クラミジア同時検査(尿 or 子宮頚管+咽頭うがい液)、梅毒 | 7000円(税込み) |
5. 男性用ブライダルチェック
上記性病セット検査に下記検査を追加できます。
精液検査 3000円(税込み)
男性ホルモン採血 3000円(税込み)
主な性感染症の解説
性感染症は、インフルエンザや新型コロナウイルスと同様にヒトからヒトへ伝播する感染症です。根絶が困難な原因は新型コロナウイルスと同様、無症状の患者さん(特に女性)が非常に多いためです。特にクラミジア感染症は女性のほとんどが無症状であり、男性も軽症の場合が多く、感染に気づかないため感染がどんどん広がっていくことになります。これは新型コロナウイルスと同様の現象です。心当たりがないのに性病にかかったといわれる患者さんもたくさんいます。
また昨今はオーラルセックス(フェラチオなど)が一般化し、特に女性ののどに感染(咽頭感染)することが多くなっています。咽頭感染はほとんどが無症状であり、性交をしなくてもオーラスセックスのみで感染が広がっていくことが問題となっています。
また最近は梅毒の感染が急激に増加してきたり、薬剤耐性(薬が効きにくい)淋菌、クラミジアの出現も問題となっています。
以下に主要な性感染症について解説します。少しでも心配がおありでしたら悩まずに当クリニックを早めに受診し早期診断、早期治療を行いましょう。
1.淋菌感染症(淋病)、クラミジア感染症、マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症
男性では尿道に女性では子宮頚管に感染する性病で、最も感染者数がおおく、最も知られている性感染症です。
一般的に男性で症状が強く、尿道炎(ペニス・尿道の痛み、尿道からの膿排出)として発症することが多いですが、女性は感染してもほとんどが無症状です。最近は無症状の咽頭感染(のどの感染)が増えており、オーラルセックスによる感染伝播が問題となっています。また、薬剤耐性(薬が効きにくい)淋菌、クラミジアの出現も問題となっています。
→淋菌感染症(淋病)、クラミジア感染症、マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症の詳しい解説はこちら
2.梅毒
今、日本では梅毒が流行しています。20歳台の女性、20-40歳台の男性の感染者が特に目立ちます。梅毒というと、過去の病気のイメージを持たれるかもしれませんが、もはや若い世代に流行している、身近な性感染症となっています。この非常事態に性感染症の診療に従事している者が所属する5つの学会(日本性感染症学会・日本感染症学会・日本化学療法学会・日本環境感染学会・日本臨床微生物学会)が一致協力して「ストップ!梅毒 プロジェクト」を立ち上げ、国民の皆さまへの啓発を行ってます。当クリニックでも梅毒の蔓延防止につなげるため、どんな病気かを詳しく解説させていただきます。
3.性器ヘルペス
単純ヘルペスウイルスによる性感染症です。初感染では激しい痛みや発熱を伴い、特に女性では症状が強くでます。性器ヘルペスの一番の問題は再発です。最近再発時の新しい治療が保険適応となり、あらかじめ処方された薬を患者さん自身の判断でクリニックに行かず内服を開始できるようになりました。再発の回数を減らすためには初感染時の治療が重要と考えられており、初感染時に早期に専門のクリニックを受診し、しっかりとした治療を受けることが以後の再発予防には非常に大事です。
4.尖圭コンジローマ
低リスク型のHPV(ヒトパピローマウイルス)感染により出現する性器にできるイボです。痛みやかゆみの自覚症状はないが、視覚や接触で発見できるため、パートナーに知られる、パートナーにうつす、再発を繰り返すなどの精神的ストレスが大きい疾患です。治療期間が長く、再発率は20-30%といわれています。
文責 みうら泌尿器科クリニック院長
三浦徹也(日本泌尿器科学会専門医、性感染症学会認定医)