腎盂腎炎
腎盂腎炎は尿道から侵入した細菌が、膀胱から尿管へと尿の流れと逆方向に上行し、腎盂まで到達し腎実質内まで細菌が侵入して起こる感染症です。通常左右どちらかの腎に感染症が発症します。ここでは腎盂腎炎に関して詳しく説明します。
尿路感染症のページも同時にお読みいただけますと、より一層理解が深まりますので、そちらもご参照ください。
腎盂腎炎の症状
38度以上の高熱
左右どちらかの腰~側腹部の痛み
腎盂腎炎は腎という血流が豊富な臓器の炎症であり、症状は激しいことが多いです。発熱に関しては40度以上の高熱が出ることも珍しくありません。また感染した側の腰から側腹部に痛みやだるさがあり、側腹部を手でたたくと激しい痛みが起こるのが特徴です。
腎盂腎炎の診断
尿検査、尿培養検査にて尿に細菌がいるかどうかを調べます。
腹部超音波検査にて腎に異常がないかを調べます。
採血検査にて重症度を判定します。
腎盂腎炎の原因
①膀胱炎からの波及
主に女性に起こります。膀胱炎を治療せずに放置しておくと、細菌が腎盂まで到達し腎盂腎炎を引き起こします。この場合は、腎盂腎炎に先行して、頻尿、排尿時痛などの膀胱炎症状がおこることが多いです。(膀胱炎の詳細は膀胱炎のページをご参照ください。)
②尿路結石の患者さん
尿路結石、特に尿管結石で尿の流れが尿管の途中で遮られ、尿が下に降りて行かず腎盂に尿がたまった状態(水腎症)の患者さんは腎盂腎炎を起こしやすくなります。このような患者さんに尿道から菌が侵入し腎盂まで到達すると、腎盂内にたまった尿の中で細菌が繁殖し腎盂腎炎を発症します。結石関連の腎盂腎炎は重症化しやすいのが特徴です。腎盂内にたまった尿は結石で詰まっているため下方へ排出されることがないため、菌が繁殖し続け、敗血症のような重症感染症に陥りやすくなります。(尿路結石の詳細は尿路結石のページをご参照ください。)
③前立腺肥大症などで膀胱に残尿がある状態
主に男性の前立腺肥大症などで排尿障害があり、膀胱の尿を完全に排出できず膀胱に常に尿が残った状態の患者さんは腎盂腎炎を発症するリスクがあります。このような患者さんに尿道から細菌が侵入すると膀胱内に残った尿の中で細菌が繁殖し、一気に腎まで上行し腎盂腎炎を発症します。(前立腺肥大症の詳細は前立腺肥大症のページをご参照ください。)
④尿道留置カテーテル、自己導尿を施行中の患者さん
尿道カテーテル留置中の患者さんは、常に異物が膀胱内に留置されているため、腎盂腎炎を発症しやすくなります。自己導尿の患者さんが手技に慣れない初期の段階では、導尿操作により細菌が侵入することがあり腎盂腎炎を起こすことがあります。(尿道カテーテル、自己導尿についてはこちらをご参照ください)
腎盂腎炎の治療
腎は血流の豊富な臓器であり、腎盂腎炎を放置するとすぐに血液中に菌が侵入し、血液を通じて全身に菌が行き渡り、敗血症という重症全身感染症となって生命の危機に陥ることもあります。
早期に点滴抗生剤の治療が必要になり、ごく初期の軽症の患者さん以外は入院による治療が必要になります。
特に尿路結石が関連した腎盂腎炎は重症化しやすく、結石で詰まった尿を外に出してあげるために尿管内にカテーテルを留置する手術が必要になることがあります。