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精巣がん

精巣は左右の陰嚢の内部に1つずつある男性固有の臓器で、睾丸とも呼ばれます。精巣がんは精巣にできる悪性腫瘍です。10万人当たりの発生率はおよそ1人で決して多くはなく、男性の全腫瘍の1%程度ですが、20-30歳代の男性においては最も多い悪性腫瘍といわれ、若年者に多いことが特徴です。

精巣がんの症状

初期症状は、がんができた側の陰嚢の腫れや睾丸のしこりです。痛みは伴いません。なかなか自分で陰嚢を定期的に触る習慣がないこともあり、初期の小さい段階で発見することは難しいです。初期の段階では、パートナーが自分の陰嚢の異常に気付いてくれる場合も少なくありません。また、陰嚢内の異常に気付いても、恥ずかしくて誰にも言い出せず受診が遅れるというケースもあります。精巣がんは進行のスピードが速く、一気に全身のリンパ節や臓器に転移することもありますので、若年者で陰嚢の異常に気付いた場合は、早めに泌尿器科に受診していください。

精巣がんの原因

原因はわかっていませんが、停留精巣といって、精巣が陰嚢内におりず腹腔内に残っている患者さんでは、修復術施行の有無に関わらず一般男性に比べ精巣がんになりやすいといわれています。また、片側の精巣がん患者さんが、反対側に精巣がんを発生する頻度は20倍以上とされています。その他に、家族歴や外傷なども精巣がん発生のリスクとされています。

精巣がんの鑑別疾患

陰嚢内が腫れる疾患として、精巣上体炎、陰嚢水腫、精索静脈瘤などがあります。これらとの鑑別が必要です。

精巣がんの診断

触診

泌尿器科医が触診すると、精巣がんの可能性をある程度判断でき、その他の陰嚢疾患との判別に役立ちます。ずしりとした重みのある精巣を触れます。反体側の正常な精巣と比較し、精巣上体ではなく精巣そのものにしこりや腫れがあることを確認します。

陰嚢超音波検査

陰嚢の超音波検査にてほとんどの精巣がんは、診断ができます。

血液検査

精巣がんには、LDH(乳酸脱水素酵素)、 AFP(アルファ胎児性蛋白)、hCG(ヒト縦毛性ゴナドトロピン)、 hCGβ(hCGβサブユニット)などの腫瘍マーカーがあり診断や治療効果の良い指標になります。

CT・PET検査

精巣がんは進行のスピードが速く、見つかった時にはすでに転移をきたしている場合も少なくありません。CTやPET検査を行い全身の転移の有無を調べる必要があります。

精巣がんの治療

①手術:高位精巣摘除術

転移の有無にかかわらず、まずは、がんのある側の精巣を摘除します。精巣だけとるのではなく、精索といって精巣に行く血管の束も一緒に摘除するため、陰嚢を切開するのではなく、足の付け根の鼠径部を切開し、精巣と精索を摘除する手術です。

この手術で摘出した精巣を病理検査で詳しく調べ、精巣がんの種類を判別します。精巣がんは、細胞の種類によって大きくセミノーマと非セミノーマに分けられます。 後者の方が転移を起こしやすく、より悪性の経過をとります。

転移がなければ、この手術で治療は終了になります。手術後は定期的に腫瘍マーカーの採血とCT検査を行う必要があります。

②抗がん剤治療

転移のある精巣がんでは、抗がん剤治療が必要になります。精巣がんは抗がん剤治療で完治できる可能性のある数少ない固形がんです。(固形がんとは、白血病のような血液のがん以外の、臓器や組織などで塊を作るがんの総称です。白血病のような血液のがんは抗がん剤治療で完治できるがんは非常に多いですが、固形がんで抗がん剤治療で完治するがんはほとんどありません。精巣がんは固形がんですが、抗がん剤治療で完治する可能性がある数少ない固形がんの一つです。)ですから、前向きに抗がん剤治療に取り組んでいくことが大切です。

また、精巣がんの患者さんは20-30歳代の若年者が多いですので、生殖機能の維持を図ることも大切です。抗がん剤治療をすると、抗がん剤の種類にもよりますが、精巣の精子を形成する機能が一時的に失われます。ですから、今後挙児希望がある場合は、抗がん剤治療の前に男性不妊クリニックで精子の凍結保存を行うことをお勧めします。

③残存腫瘍摘除術、後腹膜リンパ節郭清術

抗がん剤治療で腫瘍マーカーが完全に陰性化した場合、残存したリンパ節の病変や転移巣のsizeが大きい場合は手術で摘除することがあります。

 

精巣がんの抗がん剤治療は副作用も多く、大変な治療ですが、最近では吐き気などの副作用に対する予防薬も進化しており、以前よりは治療が楽になってきています。そして何といっても、精巣がんは転移していても抗がん剤治療で完全に治る可能性がある病気です。患者さんの年齢も若いですので、医療者側も「何とか治してやろう」と思って全力で治療にあったていますので、ぜひ希望をもって治療に前向きに取り組んでください。

私が大学時代に主治医を担当した改發厚さんが、精巣腫瘍患者友の会を立ち上げて、精巣がんの啓蒙活動など素晴らしい活動をされています。治療にお悩みの方などがおられましたら一度相談されてみてはいかがでしょうか。→精巣腫瘍患者友の会のホームページはこちら

 

 

 

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