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慢性前立腺炎でお悩みの患者さんへ

 

慢性前立腺炎という疾患はあまり耳なれない疾患かもしれません。しかし、この病気に悩んでいる人はかなり多く、50歳以上の男性の罹患率は約8%に上るとの報告もあります。若年男性にも多い疾患です。以下によくある受診エピソードを例示します。

「下腹(へそ下からペニス根元上ぐらい)が重く鈍い痛みがあり目が覚めてしまいます。寝返りを打っても治りません。立ち上がると特に痛みは気にならないのですが、、」

「尿をするときだけではなく、常にペニスの先や睾丸に痛みを感じます。」

「肛門と睾丸の間の奥の方が重く痛みを感じます。特に座っているとひどくなり気になってくると仕事も手につきません、、」

このような訴えで受診される患者さんの多くは、慢性前立腺炎であることが多いです。もちろん、その他の重大な疾患が隠れていることもありますので、まずは当クリニックを受診して精査することをお勧めします。

慢性前立腺炎とは?~別名:慢性骨盤痛症候群の方が分かりやすい

1995年にNational Institute of Health (NIH)が前立腺炎の新しい分類を提唱し、正確にいうとその分類のcategoryⅢにあたるのが、慢性前立腺炎です。慢性骨盤痛症候群とも呼びます。いわゆる細菌の関与が検査で証明されない前立腺炎です。前立腺炎と聞くと当たり前ですが、前立腺に炎症が起きるていると考えますよね。しかし、必ずしも前立腺だけが悪いのではなく、骨盤内の血流障害などにより、骨盤内臓器の慢性虚血による慢性炎症が大きな原因になっていると考えられており、もっと大きな概念でこの病気をとらえた方がよいと考えています。ですので、別名である慢性骨盤痛症候群といったほうが分かりやすいもしれません。

慢性前立腺炎の原因

残念ながら原因の特定はできておりません。先述しましたように、骨盤内の血流障害などによる骨盤内臓器の慢性虚血による慢性炎症が大きな原因であると考えていますが、非細菌性微生物の関与や前立腺腺管内への尿の逆流、骨盤底筋の過緊張など様々な原因が積り重なって起こっていると考えられています。

慢性前立腺炎の症状

上記にエピソードを例示したように、主な症状は、会陰部(肛門と睾丸の間の奥)、睾丸、ペニス、下腹部の痛みや不快感です。また、排尿時のペニスの痛みや灼熱感、射精時や射精後の痛みもあります。人によって出る症状は多種多様であり、重症度や治療の効果判定が難しいのがこの疾患の特徴でしたが、先ほどのNational Institute of Health (NIH)が中心となり、慢性前立腺炎症状スコアという症状インデックスが確立されました。これにより、重症度や治療効果判定が客観的にわかるようになりました。しかし、このスコアは日本では全くといっていいほど普及していません、、当クリニックではこのスコアを積極的に活用し、患者さんの症状をスコア化することで客観的に症状を把握したうえで治療をすすめていきます。

 

慢性前立腺炎の診断

慢性前立腺炎の診断で最も重要なことは、「慢性前立腺炎はあくまで除外診断である」ということです。除外診断とは他の重大な疾患を除外ができて初めて診断できる、ということです。慢性前立腺炎には診断の決め手となる典型的な検査がありません。ですので、慢性前立腺炎の症状と同じような症状をきたす疾患を除外しないといけないわけです。同じような症状をきたす疾患として重要なものは、尿路結石(下部尿管結石や膀胱結石)、膀胱がん、尿路感染症(膀胱炎、慢性細菌性前立腺炎)、性感染症(非淋菌性尿道炎)、精索静脈瘤があげられます。これらが除外できて初めて慢性前立腺炎と診断ができます。

診断に必要な検査

まずは、細菌の関与を否定することが肝要です。性感染症のリスクが少しでもある場合は、性感染症のチェックは必須です。通常の尿検査で尿がきれいな場合も、クラミジア感染やマイコプラズマ感染の可能性はあります。また、40歳以上の方は前立腺肥大症の合併の有無を調べるため、腹部超音波検査が必要です。また、尿検査などで血尿がある場合や症状がなかなか改善しない場合は膀胱がんの除外のため膀胱内視鏡検査やCT検査を考慮する必要があります。

必須の検査

  • 尿検査
  • クラミジアPCR検査(性感染症のリスクがある場合)
  • 腹部超音波検査(40歳以上)

その他疾患の疑いがある場合や治療による症状の改善が乏しい場合は

  • 膀胱内視鏡検査
  • 腹部レントゲン検査、CT検査

慢性前立腺炎の治療

治療は生活指導と薬物治療が中心となります。また、当クリニックでは自費診療で磁気治療も併用しております。

古典的治療として「前立腺マッサージ+抗生物質処方」がありますが、現在はほとんど行われていません。

古典的治療~前立腺マッサージ+抗生物質

前立腺マッサージとは、肛門から直腸に指を入れ、前立腺を圧迫するように指を上下に動かし行う前立腺の刺激法です。慢性前立腺炎の診断時には必要です。

この前立腺マッサージですが、以前は前立腺炎の治療として行われていました。20年以上前は、前立腺炎の治療といえば、前立腺マッサージをして抗生物質を処方するというのが定石であり、前立腺マッサージをうけるために泌尿器科に通院する患者さんも多かったです。また、前立腺マッサージと併用して抗生物質を処方し、効果がなければ種類を何度も変更して服用させるような治療が一般的に行われていた時代もありました。

しかし、現在は抗生物質の汎用により、細菌の薬剤耐性化(抗生剤が効かなくなる)が顕著になり、また、前立腺炎の原因が細菌感染ではない場合のほうが多いことが分かってきたため、前立腺炎において漫然と抗生物質を頻繁に変更するような治療は行われなくなりました。むしろ行うと細菌の薬剤耐性化という重大な害をもたらしてしまうリスクになります。

一方、前立腺マッサージですが、これは骨盤内の血流改善効果がありますので、前立腺炎の症状に対して効果のある患者さんには行ってもよい治療です。ただ、患者さんへの負担が大きい(個人差もありますが)治療となりますので、現在では第一選択とはなりにくい治療です。

生活指導

慢性前立腺炎は骨盤内の血流不全がかかわっており、骨盤の血流障害をきたす行動をできるだけ避けてもらうよう指導します。具体的には、長時間の座位、刺激物の多量摂取、飲酒をなるべく控えてもらい、長時間のデスクワークや自動車の運転の際は、合間に席を立ったり、車から降りたりして少し体を動かすことを心がけ、自転車やバイクに長時間乗ることを避けてもらいます。また、ストレスや疲れも血流障害の原因となりますので、なるべくストレスをためないように心がけてもらいます。と、言うのは簡単ですが、なかなか日々の仕事のなかで、これら全てやめてくださいと言っても無理でしょう。患者さんの生活スタイルを問診させていただき、それに合わせて原因となっているような行動がありましたら的確にアドバイスさせていただきますので、お気軽に当クリニックにご相談ください。

薬物治療

慢性前立腺炎は原因が特定できていないため、薬物治療も画一的なものはありません。当クリニックでは患者さん個々の状態をみて治療薬を判断します。具体的に使用する薬剤としては、抗菌薬(主にマイコプラズマ尿道炎をターゲット)、PDE5阻害薬(前立腺肥大を合併されている場合)、抗炎症薬(植物製剤や鎮痛剤)、漢方薬などが挙げられます。治療効果に関してはすぐに現れる患者さんもおられますが、長期間の治療が必要になる患者さんもおられます。症状が改善しない場合は別の薬に変えたり、いくつかの薬を組み合わせたりするなど、粘り強い治療が必要になるケースもあります。

磁気治療

当院では磁気刺激装置を導入しています。

骨盤内の血流の改善を目的に、薬物治療では改善がみられない患者さんには薬物治療と併用して磁気治療を提案いたします。

→磁気治療の詳細はこちら

 

文責 みうら泌尿器科クリニック院長 三浦徹也(日本泌尿器科学会専門医)

 

 

 

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