おねしょ(夜尿症)
乳幼児期ではおねしょは当たり前です。5歳以降でもおねしょがあると、ご両親が気にし始めることが多いです。夜尿症とは、5歳以降で 月1回以上のおねしょが3か月以上続く場合をいいますが、すべてのお子様に治療が必要というわけではありません。ほとんどは治療しなくても自然に良くなるからです。
おねしょが実際に気がかりになるのは小学校に上がってからもおねしょが継続する場合が多いようです。ただ、夜尿症は自然に軽快することが多いですので、積極的な治療が必要なのは、お子様ご自身やご両親が夜尿症に悩んでいるケースです。
おねしょが続くお子様はどれくらいいるの?
一般的に就学直前の5-6歳で約20%、小学校低学年で約10%、10歳を超えてもみられるのが約5%、中学生で1-3%、まれながら成人でもみられることが報告されています。小学校入学時に夜尿症のあったお子さんも卒業の時にはほとんどが改善している事がわかっています。自然に良くなるものだと親もこどももおおらかに構えることが一番です。そうはいっても合宿や学校行事で自宅以外に泊まったりする機会も出てきます。お子さんがおねしょを気にするようになったら当院に相談してみてください。
夜尿症の分類~一次性と二次性
一次性夜尿症とは、6か月以上おねしょがなかった時期がなく、小さいころからずっとおねしょが続いている夜尿症をいいます。一方、二次性夜尿症とは、おねしょが消失していた時期が6か月以上あり、再度おねしょが起こるようになった夜尿症をいいます。頻度的には一次性夜尿症が75%以上をしめます。よく夜尿症といえば、お子様の精神的なストレスなどの要因があるといわれますが、少なくとも小さいころから続いている一時性夜尿症ではストレスなどの要因はあまり関係ありません。しかし、二次性夜尿症では、学校生活のストレスなどの要因が関係あるとされていますので、一度とまったおねしょが再発したような場合は、学校生活にないか変化がなかったかをよく問診する必要があります。
夜尿症の原因
はっきりした原因は解明されていませんが、お子様は眠りが深いため、夜間におしっこをしたいという尿意では目覚めることはありません。ですから、膀胱に最大貯められる尿量を超えた尿が夜間にたまると、自然に排尿されおもらしとなるわけです。
つまり夜間に膀胱に尿がたまる量が多すぎるとおねしょの原因になり、最大の要因は、「寝ている間につくられる尿量が多すぎる」ことです。寝ている間の尿量増加は①水分の取りすぎ②夜間の抗利尿ホルモン(夜間尿量を減らすホルモン)の分泌低下などがあげられます。
次に考えられる原因として、「膀胱容量の低下」があります。成人でいう過活動膀胱と同じです。膀胱が1回に貯められる尿の量が少ないため、お漏らしをします。お子様で膀胱容量の低下をきたす原因として便秘があげられます。
その他、発達の障害や遺伝的要因も原因と考えられています。
夜尿症の診断
①問診
夜尿症の診察では最も重要な項目です。まず、一次性なのか二次性なのか、昼間にもお漏らしがあるかなど必要な問診項目を聴取します。当院ではweb問診で必要な項目を入れておりますので、ぜひ受診前にweb問診でご回答ください。
②尿検査
これも必須の検査です。感染症などなにか他の疾患がないかを調べる上で必要です。
③超音波検査
難治性の夜尿症の際に、腎、膀胱に異常がないかを調べるために行う検査です。
夜尿症の治療
まずは、生活指導、行動療法を3-6か月行います。それでも改善しない場合は積極的治療を行います。
1.生活指導
・早寝、早起きをし、規則正しい生活をする
・適正な水分量を摂取する
年齢 | 性別 | 1日水分摂取量 |
4-8歳 | 男児・女児 | 1000-1400ml |
9-13歳 | 男児 | 1400-2300ml |
女児 | 1200-2100ml | |
14-18歳 | 男児 | 2100-3200ml |
女児 | 1400-2500ml |
・塩分を控える
・便秘に気を付ける
・寝る前にトイレに行く
・寝ているときの寒さ(冷え)から守る
・夜中、無理にトイレに起こさない
・おねしょをしたことで子供を叱らない
2. 行動療法
①夜尿がなかった日にご褒美
排尿日誌を作成し、夜尿がなかった日に何かご褒美をあたえる方法です。夜尿が毎晩ではない5-7歳児の治療には有効とされています。逆にご褒美を没収するようなペナルティーは逆効果といわれています。
②水分量の調節
・1日の水分量を朝から午後の早い時間帯までに重点的にとる。
・夜間は特に糖を多く含む清涼飲料水やカフェインの含んだ飲料の摂取を控える
3. 積極的治療
①アラーム療法
お子さんが8歳前後になっておねしょを治したいと希望するようであれば試してみてもよい治療です。大事なのは、お子様もご両親も治療へのモチベーションが高いことがこの治療が成功する最大の条件です。約2/3のお子さんに治療効果があるとされています。
最初におねしょアラームを購入する必要があります。「おねしょアラーム」で検索すると、楽天やamazonで購入可能です。このアラームは寝る前にお子さんのパンツに小さなセンサーをつけ、おしっこでパンツがぬれるとアラームが鳴ってお子さんを起こす仕組みになっています。ただし最初はお子さんが自分で起きることはまずないので、ご両親が起こしてトイレまで連れて行き、おしっこが残っていれば完全に排尿させる必要があります。最終的にはお子様が自分で目覚めるようになることが重要です。
最低限14日間連続でおねしょが消失するまで行う必要があり、最低3か月は治療にかかります。根気と忍耐、時間もかかる治療です。
短期間での夜尿の改善を希望される場合や、ご両親のモチベーションが低い場合はこの治療は適応になりません。
②薬物治療
デスモプレシン
6歳以上の患児には第一選択となる薬です。
デスモプレシンとは抗利尿ホルモンの合成製剤です。上にも述べましたが、おねしょをするお子さんの多くは夜間に多尿になっています。人間の体の中では尿量をへらすために抗利尿ホルモンが分泌されていますが、夜尿症のお子さんでは夜間のこのホルモンの分泌が少ない場合があります。そのような場合は寝る前にこのホルモンを補ってあげると夜尿が生じません。
就寝前30-60分に内服します。夜尿の状態により内服量の調整を行います。内服1時間前から内服8時間後までの飲水を240ml以内に制限する必要があります。
半分以上のお子さんで効きますが、やめると元に戻ることが多いのが欠点です。徐々に減量していくことで再発を予防します。よく効くお子さんでは普段は使わなくても修学旅行など、ここぞという場合に使用してもらうことが出来るのがこの薬剤の最大の利点です。
抗コリン薬
過活動膀胱に対する治療薬です。夜尿症に関しては十分なエビデンスがありません。その他治療で効果がない場合に考慮します。