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おしっこ、尿のお話①~人間は「オムツに始まりオムツで終わる」?

[2022.07.04]

皆様、こんにちは。

みうら泌尿器科クリニック院長の三浦徹也です。

この度は当院ホームページをご覧いただきありがとうございます。

このコラムでは、皆様に有益となるような病気の情報を中心に、あまり知られていない医療の裏側など、皆様の興味が湧くような内容を書いていこうと思います。

今回はおしっこ、「尿」について説明します。皆様、「尿」は毎日みると思いますが、「尿」の正体や役割を知っているでしょうか?意外に知らないこともあると思います。そして、「尿」が我々に知らせてくれるカラダの点検ランプもあります。毎日みる「おしっこ」をしっかり観察することで、カラダの異常を早期に知ることができるかもしれません。

「尿」を理解するためには、「尿=工場の廃棄物」と考えると分かりやすいです。以下に詳しく説明します。

「尿」とは?

尿とは、血液中に取り込まれた過剰な水分や塩分、老廃物を体外に排出するために腎臓が血液を「ろ過」してできたものです。いわば、腎臓という工場が産生した廃棄物ということになります。腎臓という工場は、過剰な水分や塩分、老廃物を体外に排出し、我々の生命を維持するために24時間365日フル稼働しています。ですからその廃棄物である「尿」も常に産生されることになります。しかし、廃棄物を垂れ流しにしてしまうと人間活動に影響を及ぼすため、我々は膀胱という貯蔵タンクを持っています。この貯蔵タンクが一杯になると、我々は排尿という行動で一気に体外に廃棄物を排出します。

「尿」を廃棄する流れ

我々は腎臓という工場を左右に2つ持っています。飛行機が両翼にエンジンを装備しているのと同じように1つのエンジンが破壊されても生命を維持するために、ツインエンジンを保有しているわけです。左右とも尿の廃棄の流れは同様です。腎臓はまず尿を「腎盂」というスペースに廃棄します。その後、「尿管」というダクトを通って貯蔵タンクである「膀胱」まで流れていきます。この腎盂というスペースと尿管というダクトは左右それぞれの腎臓が保有しています。しかし、貯蔵タンクである膀胱は1つしかないため、左右のダクトが膀胱にそれぞれ開口し膀胱の中で左右の腎臓で破棄された尿が混ざり合って貯蔵されることになります。ここまでの尿の流れは、我々の意識とは無関係に自動的に行われるようになっています。

膀胱という貯蔵タンクが一杯になると「尿道」というダクトを通って「尿道口」という出口から尿を体外に排出します。女性の場合は、膀胱から尿道口までの間に障害物はありませんが、男性の場合は、膀胱の下に「前立腺」という「山」が存在するため、その前立腺のど真ん中にトンネルを掘って尿道というダクトを通し尿道口まで通じています。この膀胱から尿道を通って尿道口から尿を排出する行動を「排尿」といいます。この「排尿」は我々の意識下で行います。つまり、いつでもどこでも尿を排出してしまわないように、「排尿」には工場長である我々の許可が必要になるわけです。我々が許可すれば、長い道のりを経て尿はやっと体外に排出されることになります。

*尿管と尿道を混同している方はかなり多いです。

 「尿管」は腎臓から膀胱までのダクトで左右2本あります。「尿道」は膀胱から体外に尿を出すダクトで1本だけしかありません。

 

「尿」が出なくなればどうなる?

尿は、我々が腎臓という工場に命令して老廃物を処分することによってできた廃棄物ですから、尿が出なくなれば廃棄物を放出できなくなるため、老廃物がカラダにどんどんたまってしまい、生命が維持できなくなります。

逆にいえば、「排尿」を正常に行えていることは工場が正常に稼働しているサインです。

夜間は工場の稼働を最低限にし「尿」を少なくする

我々は寝ているときに脳から抗利尿ホルモンというホルモンを分泌し、腎臓の工場に「尿を作るな!」という命令をします。なぜなら、寝ているときに尿がでれば、わざわざ起きて排尿をしなければならなくなり、睡眠が障害されるからです。ですから睡眠中は腎臓の工場の稼働が必要最小限に抑えられ、そのため廃棄物である尿の量は少なくなり、朝一の尿はかなり濃くなり赤褐色に近い色となります。

逆に朝一に透明な尿が出るのはよくありません。これは睡眠中の抗利尿ホルモン分泌量の低下により起こり、腎臓に「尿を作るな!」という命令がいかなくなるため、睡眠中も腎臓はどんどん尿を産生してしまうので、夜間頻尿(夜間に何度も排尿のために起きる)の原因となります。睡眠中の抗利尿ホルモンの分泌が低下する原因は、加齢や生活習慣・リズムの乱れです。考えてみてください。若い時に寝る前にいくらお酒や水を飲んでも寝ているときに尿に起きることはなかったでしょう。しかし、加齢とともに抗利尿ホルモンの産生が低下すれば、腎臓の工場は寝ている間もフル稼働してしまいますので、飲んだ分がそのまま尿として出てしまい、夜間頻尿(夜間に何度も排尿のために起きる)になってしまうわけです。 →夜間頻尿についての詳しい解説はこちらのページを参照ください。

人間は年をとれば子供に戻る?

乳幼児は睡眠中に抗利尿ホルモンの分泌がうまくできません。これがおねしょの原因です。乳幼児は夜間に抗利尿ホルモンの分泌ができないため、腎臓はフル稼働しどんどん「尿」を作り、また貯蔵タンクである膀胱の容量もまだ小さいため、夜間にあふれ出してしまいます。乳幼児は眠りが深いため、あふれ出したことに気づかず、おねしょとなります。成長とともに抗利尿ホルモンがうまく分泌されるようになれば、おねしょはとまります。

そして、年を取ればまた抗利尿ホルモンがうまく分泌できなくなってしまうため、夜間に何度も尿に起きなくてはならなくなり、ひどくなればおねしょをしてしまいます。

「オムツに始まりオムツで終わる」 これが運命でしょうか。人間は最期に子供に戻ってしまうのでしょうか。その運命を阻止すべく我々泌尿器科医は皆様の「尿」のトラブルの治療に取り組んでいますので、トラブルが起こればお気軽にご相談ください。

 

次回のコラムでは、おしっこ、尿のお話②として「尿」が知らせてくれるカラダの二大点検ランプについて解説する予定です。

 

みうら泌尿器科クリニック

三浦徹也

 

 

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